CAPS患者・家族の会

CAPSとはどんな病気?

CAPSとは
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPSCryopyrin-Associated Periodic Syndrome)は、生後ないし、乳幼児期から発症する発熱や激しい炎症を繰り返す、発症は100万人にひとり、国内患者数100名ほどの非常に稀少な難治性の自己炎症性疾患です。

CAPS

自己炎症性疾患とは
生まれつきの免疫システムの異常により、炎症性サイトカイン(IL-1β)を過剰産生してしまい、関節・皮膚・腸・眼・骨・中枢神経など全身を攻撃してしまう病気です。
自己免疫疾患、アレルギー疾患、免疫不全症とは区別されます。

  • クリオピリン関連周期性発熱症候群(CAPS)と、その他の明らかにされている自己炎症性周期熱症候群について、くわしくはこちらから 》》

CAPSの症状
周期的に繰り返す高熱、弱視・視力喪失、進行性難聴、ぶどう膜炎、水頭症、貧血、知的障害・発達遅滞、口内炎、著しい低身長、視神経乳頭浮腫、蕁麻疹様発疹、慢性的なだるさ、てんかん、慢性無菌性髄膜炎による激しい頭痛・嘔吐、炎症による関節の変形・腫れ・激しい痛み・拘縮による歩行困難、骨幹端過形成、持続的な炎症に伴うアミロイドーシスを合併し、予後不良因子となる事があるなど様々な症状があります。

CAPSの症状には上記のような症状がありますが、いずれかのタイプも患者により症状の出現が様々です。出現する症状には連続性や重複があり、はっきりとした境界線はありません。

CAPS

CAPSの3つの疾患
CAPSには以下の3つの疾患が含まれています。

CAPS

最も重度な側にあるものが、CINCA症候群/NOMIDです。
CINCA症候群による持続性の炎症は、身体のあらゆる部位に障害を引き起こします。CINCA症候群の患者の多くに、関節、脳、眼、耳をはじめとする部位に炎症性の損傷が認められ、臓器にアミロイド蛋白が沈着することによるアミロイドーシスがみられることもあります。

Muckle-Wells症候群(MWS)には、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)といくつか同じ特徴がみられますが、炎症がさらに強く長時間にわたって続くことがあるため、中等度に位置します。
Muckle-Wells症候群(MWS)は、進行性聴覚障害や、アミロイドーシスによる腎障害など身体のいくつかの部位に損傷を引き起こす恐れがあります。

家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)は、寒冷刺激が原因で発作性に炎症が起こります。通常はどの身体組織にも永久的な損傷を与えることがないため、最も重篤度が小さいものと考えられます。

アミロイドーシス(Amyloidosis)
炎症により血液中には様々な炎症産物(蛋白質)が作られますが、 その中にはアミロイドの元になる蛋白質も含まれています。ふつう、この蛋白質は体の中で分解され排除されます。 しかしながら、炎症が長時間続くと高濃度で長時間滞在するため分解やその処理が不十分となり、アミロイド蛋白という溶けにくい蛋白質が、消化管・腎臓・心臓などに沈着して臓器障害を起こすことがあります。

誤診・不明熱の可能性
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)は、誤診により見逃される可能性のあるまれな病態です。

CAPS

クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)や高IgD症候群(HIDS)はとても珍しい病気の為に多くの医師が病名を認知しておらず、誤診や不明熱などと診断され見逃されてしまう可能性があります。

この稀な症候群を耳にしたことがある医師であっても、多くが医療の現場で実際の患者を見たことがありません。発症が世界的に見て100万人に一人(高IgD症候群は2000万人に一人)の割合でみとめられるものと考えられていますが、これは統計的推定値にすぎません。一部ではこれらの病気が考えられる以上に広く行きわたっているものの、誤診や原因不明熱と診断されていると考えられております。

乳児期から頻回または持続性の発疹が認められ、発熱、関節痛、炎症、目の充血や疼痛、頭痛が伴うようであればこの病気について考える必要があります。

一度進行してしまった障害は治る事はありません。クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)や高IgD症候群(HIDS)は生後間もなく発症し、炎症により障害が進行して行きますので、早期発見、早期治療により炎症や障害の進行をを抑える事が、幼い患者の将来に非常に重要になります。

発症原因
CAPSは、NLRP3(CIAS1)1つの塩基に変異が入ることによりCAPSが引き起こされます。

クリオピリンは細菌やウイルスなどの感染病原体を感知し、感染病原体を撃退するのに助けとなるIL-1β(炎症性サイトカイン)の産生を増大させて炎症応答を調整します。NLRP3(CIAS1)に変異が生じると、感染病原体に応答したときだけでなく、常にIL-1βを過剰産生させるようになり、出生時または乳児期から認められる多数のCAPSの症状を引き起こし、生涯にわたって持続させ、臓器障害、関節の拘縮や破壊、難聴、アミロイドーシス等の合併症を引き起こします。

NLRP3(CIAS1)遺伝子の変異は常染色体優性であり、NLRP3(CIAS1)遺伝子の変異は、CINCA症候群によくみられるように受精時に突然変異で起こることもありますが、家族性寒冷蕁麻疹やMuckle-Wells症候群(MWS)のように、多世代にわたって伝えられる事もあります。

診断
家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、Muckle-Wells症候群(MWS)、CINCA症候群の間には多数の症状の重複があり、CAPSの病態の範囲を理解することが患者の診断および治療に有用であるものと考えられます。こちらの図表をご覧下さい。この図表では、CAPSに含まれる症状を比較しており、CAPSとその他の自己炎症性疾患との比較方法がわかるようになっています。

家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)患者またはMuckle-Wells症候群(MWS)患者の大半にNLRP3(CIAS1)遺伝子の変異が認められますが、CINCA症候群の臨床症状がみられる患者の40%にはNLRP3(CIAS1)変異が認められません。このため、症状に基づく臨床診断がきわめて重要です。CAPSの適切な診断には、症状に対する十分な評価、臨床検査、出生時から現在までの完全な病歴のほか、NLRP3(CIAS1)の遺伝子検査、他の自己炎症性疾患の鑑別を含めることが必要です。

症状のひとつ、発疹
CAPSの最初に注目される症状に発疹が挙げられることが多くあります。

CAPS

CAPS患者の大半が、出生時または出生後間もなく発疹が現れます。Muckle-Wells症候群(MWS)および家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)の少数例では、乳児期以降に発疹が現れます。

丘疹、蕁麻疹様発疹が全身にみられ、発熱時にひどくなります。大半の症例では、発疹にかゆみはありませんが、少数の患者がかゆみを訴え、灼熱感を訴える患者もいます。一部の患者には発熱の間だけ発疹がみられますが、大半の患者にはほぼ毎日発疹がみられ、発熱の間にはきわだってみられることがあります。